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研究内容

 プラスの電荷を持ったイオンと、マイナスの電荷を持った電子によって構成される荷電粒子多体系である「プラズマ」は、個体、液体、気体に続く物質第4の状態と認識されており、宇宙の実に99.9%を占める普遍的な物質状態です。このプラズマが創出する複雑現象の探求は、将来の基幹エネルギーとして期待される核融合発電の実現や、超高強度レーザーによる小型がん治療装置の開発、高エネルギー宇宙線生成起源の解明などに重要な役割を果たすだけでなく、強い非平衡性と非線形性で支配される物理現象を紐解く鍵となり得ることから学術的にも重要な研究対象です。

 我々の研究室では、核融合プラズマ中の乱流輸送現象を、スーパーコンピュータや機械学習(AI)を活用することで理解するとともに、レーザー生成相対論プラズマ中で創出される無衝突衝撃波や強磁場形成を、実験とシミュレーションを併用することで解析しています。そのような多角的な研究を通して、プラズマ物理に関する幅広い研究・教育活動を行っています。

 

研究テーマ

A-1:スーパーコンピュータによる核融合プラズマ中の乱流現象の解明

Study of turbulent transport process in fusion plasmas by utilizing peta-scale super computer

 核融合エネルギーを実現するためには、限られた狭い空間に高い圧力のプラズマを長時間、しかも安定に閉じ込める必要があります。 しかし、そのとき形成される急峻な圧力勾配が自由エネルギー源となり、プラズマ中には様々のスケールの揺らぎが励起されます。それらはしばしば乱流状態となりプラズマ中に大きな熱輸送を引き起こすため、このような揺らぎの発生メカニズムを解明し、抑制・制御することが核融合の実現に向けて重要な鍵を握ります。

 プラズマ・核融合基礎学分野では、ペタスケールのスーパーコンピュータを駆使した大規模シミュレーションを行うことで、そのようなミクロスケールの乱流をマクロスケールの装置サイズ全体で追跡することが可能な第一原理コード「GKNET」を開発し、それを用いた乱流輸送シミュレーション研究を行っています。加えて、更なる大規模計算を見据えて、磁力線に沿った座標系の導入や、GPU並列による高速化などを行っています。

 GKNETを用いて行ったシミュレーション結果の動画は、トップページのアーカイブからご覧になれます。





A-2:機械学習(AI)を用いたプラズマ現象を推論するアルゴリズムの開発

Development of new algorithm to infer the plasma dynamics based on machine learning (AI)

 一般にプラズマは強い非平衡性と非線形性からそのダイナミックスは複雑であり、加えて運動論的効果が本質的な役割を果たすことから位相空間を取り扱う必要があるため、シミュレーションで結果が得られたとしても、その大規模なデータの背後に潜む物理を人間が理解できない場合が多いです。

 プラズマ・核融合基礎学分野では、得られたデータをニューラルネットワークと呼ばれる方法論を用いて機械学習することで、そのデータがどのような偏微分方程式で支配されているか推論する機械学習アルゴリズムを開発しています。本手法を用いることで、大規模シミュレーションで得られたデータを再現可能な少数自由度モデルを効率的、かつ高精度に構築することが可能となります。加えて、粒子/熱輸送と密度/運動量/温度の因果関係を推論する機械学習モデルの開発や、深層学習への拡張など行っています。






B-1:レーザー生成高エネルギー密度プラズマの閉じ込め手法の探求と核融合への応用

Development of methodology for confinement of laser-produced high energy density plasma for nuclear fusion

 近年のレーザー技術の急速な進展に伴い、パルス長がフェムト秒からピコ秒と極端に短く、一方、出力パワーがテラワットからペタワットに及ぶ高強度レーザーが開発されています。このようなレーザーを様々な物質に照射することにより、物質は瞬時に電離するとともに、電子は光速近くにまで加速されます。すなわち、相対性理論が支配する、これまでに例を見ない“高エネルギー密度プラズマ”を生成することができます。この高エネルギー密度プラズマは、次世代の小型の粒子線がん治療装置の開発や核融合、高エネルギー宇宙線の生成起源の解明など、医療・産業・学術等への幅広い応用研究が期待されていますが、通常パルス長程度の非常に短い時間スケールで消失します。したがって、高エネルギー密度プラズマ状態を長時間保持する(閉じ込める)ことが応用研究につなげるためのポイントとなります。

 プラズマ・核融合基礎学分野では、このような超高強度レーザーと物質との相互作用のシミュレーション研究を基礎に、レーザー核融合研究も含め、高エネルギー密度状態の科学に関わる様々な学術・応用研究に取り組んでいます。

B-2:半導体技術によるターゲットの開発と高強度レーザーを用いた照射実験

Development of target using semiconductor technology and experiments for a high-intensity laser irradiation to the target

 集光強度が1018 W/cm2を上回るような高強度レーザーを物質に照射することで、数百億気圧に達するプラズマが生成します。これは太陽の中心部の圧力(2000億気圧)に匹敵し、“宇宙レベルの極限状態”が地上で実現可能であることを示しています(実験室宇宙物理)。現在、世界各国の大型レーザー施設において、粒子線がん治療装置への応用を目指した高エネルギーイオン源の開発や、超新星爆発に伴う無衝突衝撃波によるイオン加速をはじめとした宇宙での高エネルギー現象の解明に向けた実験が盛んに行われています。

 プラズマ・核融合基礎学分野では、レーザー科学の研究者と連携して、理化学研究所のX線自由電子レーザー(SACLA)や、京都大学科学研究所のT6レーザーといった大型レーザー施設において、高強度レーザーの照射実験を展開しています。また、最先端の半導体技術を駆使することで、世界に類を見ないマイクロメートルオーダで精緻にデザインされたターゲットを独自開発しています。

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